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喫煙
執筆者:林 明文

最近喫煙に対する制限が厳格になってきています。この数年間ではオフィス内で喫煙する場所も少なくなっています。業務中にたばこを吸ってよい会社はほとんどなく、会議で禁煙にすることが当たり前になってきています。受動喫煙による健康被害を被ってきたたばこを吸わない社員に対して、至極当然の環境になってきたといえます。
 

喫煙に対する企業の姿勢は全体として厳格に規制するスタンスになってきたといえますが、実際にはまだばらつきがあるように思えます。喫煙者にゆるい会社(オーナー系で社長がヘビースモーカーなどのパターン)では、表向きは業務中喫煙禁止や喫煙場所を限定していますが、実際には会議や役員室では喫煙を黙認しているケースや来客時は喫煙OKなどのケースなどもあります。逆に喫煙に厳しい会社では、社内での喫煙は一切認めない、会社行事での会食時に認めない、果ては喫煙者は採用しないという会社もあります。


このことに関連して数年前当社が人事制度の改革を請負った企業でつぎのようことがありました。人事制度の設計方針を協議するミーティングの後に、社長が私一人に相談があるとのことでした。2人しかいない社長室での相談ごとは、喫煙者の給与を下げることができないかということでした。人事制度改革プロジェクトのメンバーには喫煙者が多くいるために内々に話をしたいとのことでした。社長の意向はこういうことです。喫煙者は業務時間中にあたかも当然のようにたばこを吸うために休憩をとる。社員による多い少ないはあるが、多い社員は一時間に一回たばこを吸いに休憩する者もいる。仮に一時間のうち5分たばこ休憩をとったとし、8時間勤務の会社の場合には、一日の内40分は業務をしていないことになる。喫煙者と非喫煙者では業務時間が違っているのに同じ給与であるという主張です。


このようなあるスタンスでは正しい主張に対して、喫煙者は次のように反論するでしょう。「成果をあげているかが問題であり喫煙非喫煙は関係ない」「喫煙時間以外にもお手洗いやお茶の時間などで休憩が長い社員もいる」「たばこを吸っているのは休憩しているだけでなく仕事のことを考えている」「たばこを吸うと生産性が上がる」などです。まじめに聞くべき反論とそうでないものもありますが、人事管理の問題としては悩ましい問題です。


特にホワイトカラー業務などは、そもそも時間生産性が測定できにくいものです。よいアイディアや発想、コミュニケーションは勤務する時間にのみ連動するものではありません。たとえば休日などの勤務時間外でも業務のことを考えてしまうことがあります。またその時によいアイディアが浮かぶことなどもよくあります。だからといって勤務時間外に業務のことを考える時間を超過勤務とする事はナンセンスです。仮に喫煙者は非喫煙者に比較して勤務時間が少ないとしても数%です。ホワイトカラー系の業務の成果の振幅から考えると数%の勤務時間差は誤差範囲だと考えられます。そもそも成果に対する評価を厳格に行っていない企業では、喫煙することで減給するということは、特定の細かな領域にのみ厳格にしているように思えます。しかしながら社員処遇の平等や社員の健康管理の視点からは業務時間に喫煙をする事は禁止する方向が望ましいと思います。


ちなみに筆者も喫煙者でしかもヘビーです。以前はコンサルタントはたばこを吸う姿が職業的姿だと言っていたくらいの愛煙家です。相談を持ちかけた社長には、まずは評価制度を整備することと、業務時間中の喫煙禁止の徹底をするようにアドバイスしました。社長も重要な問題は評価と喫煙者へ遠慮であったと理解してくれました。最後に社長は私に喫煙するかと聞いたので、喫煙者でヘビーだと答えました。社長は笑いながら「話はもっともで納得したが煙に巻かれたような気がする」と言っていました。



(2010年05月18日 林 明文

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