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成果主義と雇用
執筆者:林 明文
企業の経営側と社員側の雇用に関する意識のギャップを感じる場面をよく目にします。企業によっても異なりますが、多くの企業では正社員として採用した社員は定年まで雇用することを前提としています。この定年まで雇用するということについても微妙な意識があります。優秀で会社の業績に貢献する社員については定年まで雇用したいと考えていますが、能力が低い、協調性がない、業績貢献が少ないなどパフォーマンスの低い社員については、“いたしかたなく”定年まで雇用する意識と思われます。成果主義人事を導入する企業では、この雇用に関して矛盾した状況を生み出しているように思えます。成果主義を導入することは、ローパフォーマー(以降LP)に配分していた給与を短期だけでなく中長期にわたり減少させ、平均的な社員やパフォーマンスの高い社員に傾斜配分するということになります。
成果主義を導入する経営者の本音としては、LPに対しては世間的に見て非常識ではない程度の低い処遇をした上で、定年まで雇用するというものではないでしょうか。特に業績が非常に低くない状況の中では、あえてLP社員の退職を促すようなリスクは犯さないということではないでしょうか。
しかしこの考え方は業績が悪くない状況での判断と思われます。企業業績が大幅に低下しリストラを実施しなくてはならない状況では、経営者はLP退職を迫ることになります。しかしLP社員にも言い分はあります。
「最近会社の業績が大幅に低下しました。会社としては業績に貢献の少ない社員に勇退してもらいたいと考えています。あなたはこの数年間営業成績が芳しくありません。勇退することを検討してもらえませんか。」
この会社側の発言に対して、LP社員はこう答えたそうです。
「話はわかりました。業績が大幅に低下した責任を感じて退職しろということですね。
でもこの数年間会社が好調なときも営業成績はよくありませんでした。急激な業績低下は今まで業績を上げていた人があげられなくなったからで、前から貢献していない私が原因ではありません。」
企業にとって人事管理は極めて重要な管理分野であり、そのため合理的に検討運用されなくては効果が望めません。この企業では本来“平時”に対処するべきLP社員問題を業績低下時に行おうとしているといえます。リストラ局面で見る非常に陳腐なやりとりです。
成果主義を導入することは全社員を定年まで雇用するという考え方と異なるものです。成果主義人事と雇用政策について社内での議論を十分にすることが必要となります。しかし議論はされていても残念ながら表面的な議論が多いと思います。根底にはできる限り人員削減はしたくないという感覚が存在しており、その感覚のために成果主義人事を正確に認識できていない、ないしは明示的に議論ができないということに思えます。特に役員の中で、人事管理のあり方について本質の議論をする機会が必要ではないかと思います。
以上
(2010年04月19日 林 明文)
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