コラム

最新コラム

メダルと処遇
執筆者:林 明文

4年に一度のオリンピックは、様々なドラマを見ることができます。メダル獲得が必至と評された選手がメダルを逃したり、逆にハプニングやラッキーでメダルを獲得する選手がいます。またメダルを獲得した選手の涙や笑顔には、その選手や応援をしている周りの人々の素顔や生き方などが垣間見えることもあります。スポーツ競技の最高のステージであると同時に、人間としての行き方や人生の縮図を短期間に見ることができます。
オリンピックはスポーツを通じて、国としての意識の高揚や団結を認識するものであると同時に、選手としての最高の競技の場であります。選手は国の代表であると同時に選手としての最高のステージに上がるということで、単なる個人の競技者としての立場よりもより公的な立場を認識することになります。そのための精神的な重圧は非常に大きなものであると思います。さらには企業が支援している選手は国以外にもスポンサーによる重圧もあるでしょう。メダル獲得など競技でのより高い成績が日ごろの支援に応えるものだからです。
様々な競技の中で、スピードスケートの活躍はすばらしいものがありました。日本人選手2人が銀メダル銅メダル同時の獲得という快挙です。2人の選手は企業に勤務する社員で、会社は積極的に支援してきたといわれています。この快挙に対して会社側は報償金の支給と2階級特進という処遇で報いました。

このメダルに対する処遇は、企業の人事管理という観点では様々な見方ができると思います。論点となるのは大きくは次の2つではないでしょうか。一つはメダル獲得→報償金のあり方です。もう一つは2階級特進という異例の処遇です。

人事管理は信賞必罰が原則です。今回の報償金は、銀メダルで1000万円、銅メダル獲得で600万円というものでした。報償金とは、メダル獲得による企業の士気高揚や宣伝効果という一時的な高い効果であることに対する報償ということです。しかしこの2人の選手は今回のオリンピックに際して様々な成果の可能性がありました。まずオリンピックの代表選手に選出されない可能性もあります。またメダル獲得とはいかないまでも上位入賞ということもあろうかと思います。どの場合にどの程度の報償金を支払うのが妥当なのか明確でないように思えます。人事管理的に言えば成果と報償の関係が明確でないということです。
次に2階級特進ですがこれにはいろいろな議論があります。企業の人事管理は等級制度やグレード制度と称して、基本的には職務レベルや管理能力のレベルによって給与や身分を決定するものです。階級は企業に対する役割や能力の違いで決定されるのです。一時的な高い成果を上げた今回のような場合で、階級を特進させることが妥当なのかが疑問であると感じる人も少なくないはずです。メダル獲得によって一般社員が係長に一夜にして特進することに違和感を覚えるということです。メダルを取ると職務のレベルが向上して昇格させる発想がわからないということです。また一時的な高い成果で特進をすること、特に今回のように企業の職務や管理レベルと関係のない階級の上昇は制度的に説明がつきづらいことも確かです。おそらく選手本人も会社の社員も理解がしづらいのではと思います。人事管理という観点では合理的でないといわざるを得ません。

もっと言うのであれば、これだけの快挙がこの企業にもたらすプラスの効果から考えると、報償金はもっと高額でしかるべきでしょう。少なくとも数千万円でもよいと思います。(あくまでも感覚値ですが、企業イメージや知名度向上の効果から考えるとかなりの額ではと思います)階級の変更は今回の成果とは関係ないものですので、一般的にも理解に苦しみます。人事管理は経営管理の一環であり、合理性を持って行わなくてはなりません。人事管理が経営目的達成のための合理的な手段であるという合理性、科学性のスタンスからは理解がしづらいものです。今回の特進は、通常に昇格する社員に比較して何年間か早い昇格となるというもので、月給的にも大した昇給ではないと推測します。(月給が倍になるようなものではないということです)今回の特進は周りが積極的に反対しない程度の微妙な特進と見られます。人事管理の合理性を超えてでもこのような処遇を行うのであれば、周りからも大きな批判の出ない微妙な特進ではなく、逆に驚くような思い切った特進をするもの一計だったのではと思います。

以上


(2010年03月23日 林 明文

このコラムをお読みになった、ご感想をクリックしてください。

※下記リンクをクリックする事でお客様の個人情報又は所属団体の情報を収集することはございませんのでご安心ください。
大変興味深い 興味深い つまらない


前回の
コラムを読む
執筆者の
他のコラムを読む
コラム一覧 コラムに関する
サービスを読む
お電話による
お問い合わせはこちら
TEL 03-5213-3931
人事定量分析の決定版「人事アナリシスレポート」
成熟化時代の企業リスク総合診断《MRA》
人事トレンド
コラム
組織・人事関連用語集
事例紹介
メールマガジン