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マネジメント型からリーダーシップ型への管理職シフト
執筆者:高柳 公一
1月下旬に、米国でオバマ新大統領の就任演説が行われ、世界中にその模様が報道されました。
「我々米国人一人ひとりが、自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れることだ。私たちにとって、困難な仕事に全力で立ち向かうことほど、自らの性格を定義し、精神をみたすものはない。」
「将来、我々の子孫に言われるようにしよう。試練にさらされた時に我々は旅を終わらせることを拒み、たじろぐことも後戻りすることもしなかったということを。我々は地平線と注がれる神の愛を見つめ、自由という偉大な贈り物を前に送り出し、それを次世代に無事に届けたのだ、ということを。」(毎日新聞より引用)
就任演説の中で、オバマ大統領は、現在のアメリカが置かれている厳しい状況を直視し、正面から向き合い、団結して解決していくことを、米国民に向かって求めました。就任式の聴衆は会場内外で約200万人と言われ、史上最大規模の就任式になる見通しで、就任演説を聞いた大多数の米国民も、その内容を肯定的、好意的に受け止めていると言われています。
昨年来、証券大手、リーマンブラザーズの破たん、自動車メーカー、米国ビッグスリーの経営危機などが象徴する、100年に一度といわれる最悪の経済状況の中で、米国民は、自信と勇気を失い、自らの目指すべき方向、行うべき行動を見失っているかの状況ですが、オバマ大統領の演説は、多くの米国民に対し、そうした沈滞ムードを一気に吹き飛ばし、明るい希望の光を示すとともに、新たなるエネルギーを注入したものだったものと思われます。
もちろん、この就任演説によって、米国が直面する様々な諸問題が解決されるわけでもなく、むしろ、オバマ大統領と米国民にとって、これからが、大変苦痛の伴う仕事を忍耐強く行っていかなければならない正念場です。しかし、オバマ大統領はこの就任演説を通じて、米国民へ、これから彼らが直面する困難に立ち向かうために必要な団結心とやる気を与えることができました。米国のリーダーとして、無事、初仕事をやり遂げたと言えるでしょう。
また、オバマ大統領は、直面する困難に立ち向かうための拠り所として、『米国建国の精神に戻ろう』、というメッセージを投げ掛けました。米国国民が、目指すべき目標に到達するためには、かつて、独立戦争やその他過去の困難な時に先人たちが行ってきた業績やそのスピリットを再度認識し、現代の米国国民も、それに倣って、この困難を克服しよう、と言い、単に、目指すべきゴールを示すだけでなく、そのゴールに到達するための基本的な考え方、道筋も同時に示しました。
このように、国家であれ、企業であれ、組織のトップは、組織のメンバーに対して、その組織の目指すべき方向性やゴールを指し示し、そこに至るまでの大きな道筋を示していくこと、つまり、一言で言えば、『リーダーシップ』を発揮することが求められています。
企業のトップ、のみならず、企業内の事業部、部、課と言った組織のトップである管理職層にも、『マネジメント』力とともに、『リーダーシップ』力が必要であることに変わりはありません。
『マネジメント』とは、組織の目標を達成するために、具体的な計画を立て、行うべき業務を指示し、その進捗をコントロールしたりする事を意味しています。
また、『リーダーシップ』は、その組織をとりまく環境の変化を敏感に察知し、すばやく、組織の目指すべき目標を設定・調整し、メンバーに対し、その目標に向かって進むための道筋の提示や動機付けを行っていく事といえます。
企業内の経営層・管理職層には、これら『マネジメント』と『リーダーシップ』のどちらも期待されているはずなのですが、実際には、『マネジメント』ほど、『リーダーシップ』については、よく理解されていなかったり、重要視されていないことがよく見受けられます。
正直に申し上げて、これは、大変大きな問題ではないかと思っています。一般に、経営環境が、急激に経営環境が変化し、従来通りの経営戦略や計画が通用しなくなってしまう状況の中では、企業の経営・管理職層は、オバマ大統領のように、今の環境にマッチしたゴールを掲げ、そこに至るまでの基本的な道筋を、自信を持って示していかなければ、組織は、いくら優秀な構成メンバーを抱えていたとしても、進むべき方向性や推進力を失ってしまいます。 現在のような先の見えない経営環境においては、企業の管理職の役割として『マネジメント』よりも、『リーダーシップ』のほうが、より重要といっていいでしょう。
我が国において、企業の管理職層の能力は、一般に、『マネジメント』、いわゆる管理能力で評価されることが多く、制度上で『マネジメント』と同様、あるいはそれ以上に明示的に『リーダーシップ』を評価し、人材を積極的に登用してきた企業は、思ったほど多くないという印象があります。『リーダーシップ』人材を登用することの必要性は、各企業で認識しつつも、リーダーとなるべき人材の育成・評価は、なかなか思い通りにいかず、結果として、育成、評価のしやすい『マネジメント』人材を軸に、登用してきているというのが、実態なのかもしれません。
経営環境がさほど変動せず、一度策定された事業計画、部門計画に、大きな変更をしないで済むような環境であれば、管理職の能力要件として『リーダーシップ』より『マネジメント』の能力を重視していくことは、誤った判断ではありませんが、現在のように、世界中が大きな変化のうねりに巻き込まれ、わずか数か月先のことさえ予測がつかない環境下では、話はまったく逆です。
オバマ大統領の選挙戦でのスローガンは、「change(変化)」と「Yes we can (我々にはできる!)」、でした。リーダーにとって、単に、変化に応じた目標を設定するだけでなく、その目標達成のための強力な自信を示し、構成メンバーの士気を高めることも、重要な役割です。
いまこそ、企業は、リーダーシップのある人材を、真剣に育成し、評価する仕組みを構築し、そうした人材を積極的に管理職に登用することで、厳しい環境下、メンバー一丸となって、ゴールに推進できる組織を作っていかなければならない時期なのではないでしょうか。
(2009年02月17日 高柳 公一)
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