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コラム





外国人の高度専門人材の受け入れについて考える

 厚生労働省が発表した2006年の人口動態統計によると、出生数から死亡数を引いた人口の自然増加数が二年ぶりにプラスになった。2006年の出生数も6年ぶりに増加している。出生数がマイナスに転じた2005年から持ち直してきたようだ。しかし、少子化の流れに歯止めがかかったと断言できる状況とは言えない。少子化問題に起因して労働人口の減少を懸念する声がメディアでは取り上げられている。各企業では、この問題への対策として労働のあり方を変えることや労働の担い手の幅を広げることを推進し始めている。具体的には、自由度の高い労働時間制の設定、IT化の促進、女性・高齢者の雇用促進、外国人労働者の活用等である。これらの対策の中で、労働時間やITの積極活用による自由なワークスタイルの推進、女性や高齢者の雇用については各企業も積極的に整備をしてきている状況と言える。しかしながら外国人労働者の積極的活用に関しては十分な対策が行われていないようである。

 外国人労働者と一口に言っても、その受け入れに関しては単純労働者と高度専門人材の大きく二つに分けられている。単純労働者の受け入れについては、国内の雇用環境に多大な影響を及ぼすこと等を理由に慎重論が主流である。一方高度専門人材の受け入れは、一層の国際化及び経済の活性化を推進するために積極的な姿勢をとっている。しかし、実際には高度専門外国人の受け入れは日本ではあまり進んでいないのが現状である。
 現在、高度専門外国人の日本の労働人口に占める割合は1.1%である。これはカナダの7.2%、アメリカの6%(高度専門外国人がその国の労働人口に占める割合)と比較すると低水準である。その上、高度専門外国人の新規入国者数は年々減少している。日本は諸外国に遅れをとっている状況であると言えよう(「外国人労働者の受け入れを巡る考え方の取りまとめ」平成18年厚生労働省)。
 外国人の高度人材の受け入れが増加しない原因は幾つかあると考えられる。国が積極的に受入の基盤を整備していないことも挙げられる。また、企業も積極的に受け入れを推進する具体的な対策を行っていないことも主要な原因ではないか。では、なぜ企業は積極的に受け入れを推進しないのだろうか。原因には様々なことが想定される。例えば@キャリアアップの機会を得たら、離職してしまう、A企業文化に合わなかったら場合、離職してしまう、B母国に帰ってしまう、C異文化流入により企業文化が変わってしまう、などが挙げられる。特に@ABのように離職リスクが高いと想定される人材の雇用は敬遠されがちである。しかし、離職リスクは、リスクを抱える人材に適した人事制度をもつことや、長く定着するような労働環境を整えることで回避できる問題である。そもそも、高度人材の流動性が高いということは、逆に考えると、企業や人事の魅力が高ければ優秀な高度人材を獲得することが容易になるということでもある。つまり、優秀な人材が入社しやすく、働きやすい環境を整備することで人事上での競争優位に立てることになるだろう。

 外国人の高度人材に代表されるような、流動性の高い人材をより多く採用し、かつその中でも優秀な人材を長く雇用することができる施策を考えることが必要だ。施策は大きくは人事制度上の施策と労働環境の整備の2つの視点から考えられる。
 まず、人事制度の施策についてだが、流動性の高い人材をより多く採用するために、賃金制度を重点的に考える必要がある。流動性の高い人材を採用するためには、年齢や勤続ではなく、能力に見合った賃金が望ましい。能力を適正に評価し、成果と報酬が紐づいた成果主義の仕組みがよいだろう。具体的には、成果に応じてインセンティブを支給する仕組み。賞与の割合を大きくし、賞与で大きく差をつける仕組み等である。もちろん、この制度をうまく機能させるために、会社の求める成果と報酬をすり合わせる場や、任せられる仕事の責任・権限について話し合う場を設定することが必要だ。また、短期間で成果に対し処遇をするという観点で考えると、退職金制度の見直しも必要である。現行の長期の勤続に有利な退職金制度ではなく、勤続年数と退職金額が正比例で支給され、短期で退職しても不利にならない支給のロジックとすることや、退職金の積み立てを行わずその分を年俸に上乗せする仕組みとすることが望ましい。その他に、賃金制度だけでなく教育の整備も重要になる。短期間で会社のノウハウを吸収することを目的として入社する人材もいる。そのような人材に対しては教育によるノウハウ伝承の仕組みは非常に魅力的だろう。
 中長期的な視点では、採用した人材を長く雇用できるように、キャリアパスを明確にすることが必要である。その会社に長くいることをイメージできるということ、長期間働くことで得られるキャリアが明示されることは、長く働きたいという意欲に繋がる。そのためにはもちろん、キャリアを蓄積できるように、能力や成果の伸長を定期的に図る仕組みとしての評価制度や中長期的な視点での教育制度の構築が必要だろう。
 次に労働環境の整備についてだが、外国人が働く場合、日本の職場風土に早く慣れ、能力を発揮しやすい環境を用意することが必要だ。これは彼らが早くスキルを上げ、活躍することに繋がるだろう。そこで日本語や日本での生活をサポートする仕組みとしてチューターの存在は欠かせない。この仕組みは外国人だけでなくチューターを担う社員にも貴重な経験をさせることにもなる。また、多様な人材が活躍できる職場となるような施策等を考える「ダイバーシティ推進室」などを設け、そこに外国人に参加してもらうのもいいだろう。これにより国籍に関係なく働くことのできる企業文化を彼らを交えて醸成していくことができるかもしれない。

   外国人の高度人材を受け入れる制度は、企業も雇用される側もポジティブに捉えられる制度とするべきだろう。そして、高いパフォーマンスを発揮してもらうために、働きやすい環境を用意することも重要な課題である。今まで挙げてきた施策例はほんの一部に過ぎず、他にも様々な施策が考えうる。施策によって離職リスクは必ず低減できるはずである。外国人の高度専門人材のより積極的な採用を行い、高度な人材を生かしていく仕組みを今のうちから持つことで、人事上だけでなく、技術力等の面においても競争優位に立つことができるのではないだろうか。

(久保 博子)  

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