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コラム





コミュニケーションは正確さを保つことが大切

1.コミュニケーションの重要性
 一般的に、上司と部下の対話は一方通行になりがちで、なかなか正確なコミュニケーションにはなりにくいものです。コミュニケーションの目的は意思疎通・相互理解にあります。意思疎通・相互理解を目的としている限り、そもそもコミュニケーションは双方向的な性質をもっています。したがって、一方通行のコミュニケーションというのは本質的にあり得ず、それは単なる連絡・通達に過ぎません。
 コミュニケーションがなかったことにより発生する些細なトラブル、行き違いはお互いを不幸にするため、そうならないように、特に人事考課時のコミュニケーションは大事にして欲しいと思います。

2.コミュニケーションは成立するのか
 コミュニケーションの重要性を否定する人はいないと思うのですが、そもそもコミュニケーションは成立するのか、本当の意思疎通・相互理解ということは本質的に可能なのかどうか、ということを考えてみたいと思います。
 いきなり断定的な言い方で恐縮ですが、他人同士が完全に同一の認識を持つということは極めて困難であり、実際的にも理論的にもほぼ不可能であると考えた方が良さそうです。これは言語を媒介としたコミュニケーションのもつ本質的な問題点であろうと思います。
 正しいコミュニケーションは、言語の持たざるを得ないこの基本的な特質を理解した上で進めないと、とんでもない勘違いや悲劇が生じます。

3.言語の持つ必然的な矛盾
 例えば、私が「リンゴ」の話をしているとします。皆さんはどんな「リンゴ」を想像しながらその話を聞こうとしますか?
 恐らくは、普通の「赤いリンゴ」を思い浮かべられたのではないかと思います。しかし、私は「青リンゴ」を思い浮かべながら話をしていました。
 これは別にあえてあまのじゃくな事をしているのではありません。言語というのは、常にこうした曖昧な部分やズレを内包しています。やや哲学的な言い方になりますが、このことを「言語の特殊性と一般性の矛盾」と言います。
 簡単に言いますと、言語は常に社会通念上大まかな合意がなされている意味範囲で流通します。いわゆる常識的な意味範囲で言語を用いて会話が行われているわけです。つまり、言語は常にその意味合いを科学的に厳密な定義付けを行うことなく流通しており、流通している場合の意味範囲を「言語の一般性」と言います。
 しかし、言語の特性として必ずその常識的一般的了解事項として流通している意味からはずれた部分があります。ある言葉、ある表現、あるフレーズが一般的な意味合いに解消できず、特定の固有の意味合いを持つことがあります。ある特定の人には特別な意味合いを持つことがあります。
 先ほどのリンゴの話で言えば、辞書を見ればリンゴには「バラ科の落葉高木で…」というような定義が載っているでしょう。定義とは、常識的一般的了解事項として流通している意味範囲の最大公約数的なものです。しかし、言葉には一般的な意味合いだけにとどまらず、それ以外の特殊な意味合いを持ち合わせています。
 例えば、ある人にとっては懐かしい郷愁を想起させるような言葉でも、ある人には何の感慨も及ぼさないことはよくあることです。コミュニケーションを巡って生ずる様々な行き違いやトラブルは、同じ言葉を同じ意味で使用していると思っているにもかかわらず、実は双方ともに微妙に違った意味合い、ニュアンスの差異があり、それが誤解の原因になっていることもあると思われます。
 そうした一般的に流通する意味範囲を持つと同時に、固有の意味合いを併せ持つという矛盾が言語には内在しています。これは言語が単なる記号ではない以上、持たざるを得ない宿命なのです。

4.正確なコミュニケーション構築のために
 正しく相手を理解することが不可能なのであれば、コミュニケーションを図ろうとすることは意味がないのでしょうか?
 我々は言語を用いてコミュニケーションを行わざるをえませんが、上述のような問題が言語に内在している以上、言語を補強する手段を用いてコミュニケーションを図らざるをえません。したがって、相手を理解するためには、言語のみに頼らないコミュニケーションを行う必要があります。コミュニケーションにおいては、言語によって通じる情報量は約2割程度で、残りの8割は顔の表情、目の輝き、仕草、態度やジェスチャー等といったNon-Verbalな手段によって行われているという調査があります。
 Client、上司、同僚、部下の話している内容をきちんと理解し、本当に相手に言いたいこと、伝えたいことの真なるニーズをつかむためにもFace to Faceで向き合い、相手を理解しようとする積極的な姿勢を持った上で、言葉以外のコミュニケーションにもきちんと時間を費やす必要があると思います。
 人事考課を行われる際に、「この評価期間でどれだけ自分は部下ときちんと向き合いコミュニケーションを図っただろうか」「部下はきちんと自分の意図を理解して仕事に取り組んだだろうか」といったことを振り返られてみてはいかがでしょうか?

(井上 康晴)  

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