IT進化は人事業務に貢献してきたのか
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皆様が、最初にPCを使い始めたのはいつ頃からでしょうか。私の場合は、1981年にPC8801と言うPCを買ったのが最初でした。当時はすぐに使えるソフトが無かったので、雑誌に出ているゲームなどのプログラムをキーボードから打ち込んで遊んでいました。しかしその興奮も長くは続かず、数か月後には埃をかぶることが多くなり、そのうち高価だったPCもただの箱になっていきました。
そして四半世紀近くを経た現在、我が家には子供のPCも含めると4台のPCがあり、電気のコンセントを通じた家庭内LANによって家のどこでも仕事はでき、快適にインターネットなどを楽しむことができます。
最初にPCを使い始めた頃、一般の個人が日常的に使える時代が来るとは想像していませんでした。そういう意味では、携帯電話などのモバイル系も含めて、ITの驚異的進化の恩恵を個人は確実に受けています。
では皆様のビジネスの現場ではいかがでしょう。このコラムの読者の方は、当然ながら人事関係の方が多いと思うのですが、人事の仕事の上でIT進化の恩恵をどれほど感じていらっしゃるでしょうか。
社員がインターネットで勤怠などの申請を行うようになったので、ペーパレス化が進み、人事での入力が減ったとか、社員の履歴情報もほぼ無制限に持てるようになったとか、それなりの利便性の向上や進歩はあると思います。しかし昔から人事情報システムを導入されていた大企業、中堅企業の人事業務は、私たち個人が感じているほどの恩恵を受けているのでしょうか。
今でも経営意思決定に必要な分析仕事ほど、資料をかき集めてEXCELで奮闘しなければならないし、逆に個人情報漏洩の危険性が高まったことで、余計な心配もしなければならなくなったのではないでしょうか。
私が最初に人事系システムの仕事をしたのは1985年頃ですが、20年近くを経た2003年から2年間、出向先の会社がやっていた人事給与のASP、BPOサービスの責任者を務める機会がありました。
その時、営業も含めていろいろなお客様を訪問する機会があったのですが、人事システムの中身も企業の活用レベルも、1980年代とあまり変わっていないという印象を受けました。もちろん先ほど述べたような利便性の向上や、外資系ERPが大企業を中心に人事分野でも勢力を伸ばすという環境の変化はあったものの、他の業務分野ほどには情報分析などを通じた付加価値向上につながっていないように感じました。
その理由としては、以下のような点が考えられます。
- 人事システムは、売上に直結する基幹系システムではないため、予算の制約が多いことから、大半の企業がより安価なパッケージ製品を使わざるをえない
- パッケージ製品は、機能的制約が多いため、自社の特徴に合った使えるシステムを作りづらい
また以下のような、パッケージ製品自体の問題も考えられます。
- 日本の人事パッケージ製品は、給与計算業務を中心に開発された歴史があり、属人情報や人件費管理などを中心にした考え方を引きずっている傾向がある
- そのため外資系のERP製品に比べて、職務やスキルの観点が弱いため、多面的な分析を行いづらい
このように書くと、高くても外資系のERP製品をお勧めしているのかと思われそうですが、逆に外資系ERP製品には以下のような課題があると思っています。
- 給与計算は、源泉徴収制度のある日本固有のシステムのため、後から付け足したという事情がある。そのため長年対応してきた日本の製品のほうが肌理細やかさの点では一日の長がある
- ワールドワイドでERPを使うなど全社的に活用するときは、グローバル人事なども含めて効果を発揮するが、そこまでの規模でない会社では投資対効果の観点からはちょっときつい
もちろん「人」、「報酬」、「スキル」、「職務」、「時間」などを組み合わせた先進的なHCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)を目指される会社であれば、高価なERP製品もチャレンジする価値はあると思っています。
「うーん、それではどうすればいいんだ。」と言われそうですが、私は以下のように考えています。
- ひとつのパッケージ製品ではすべてのニーズに対応できない。可能な限り組み合わせる
- 組み合わせの選択肢のひとつにパッケージ製品に頼らずゼロから作ることも考慮する
一つのモデルとしては、以下のような組合せが考えられます。もちろんそれぞれが上手く連携できるかという問題はありますが、外部システムとのデータ連携は基幹系では当たり前の時代ですので、大きな問題はないと考えます。
- 給与計算は、日本のパッケージ製品
- 勤怠系、申請系はASP、SaaSなどの外部サービスの利用
- 人事情報系は、会社の規模や人事業務の成熟度、今後の方針によって外資系ERP製品、日本のパッケージ製品、ゼロベースいずれもあり
人事情報系には評価システムも含みますが、この部分こそ人事戦略をサポートする上で最も重要で各社の特徴も出てくる部分だけに、パッケージの適合度は間違いなく低下することから、ゼロベースで考え、開発したほうが投資対効果は高いと考えています。
人事系システムでも当初予算を大幅に超過したERP製品、パッケージ製品の導入が多い事実を見るにつけ、ゼロベースでの導入も十分検討する余地はあると思います。
トランストラクチャの「人事アナリシスレポート」で行っている人事の定量分析を含めて、人事の様々な側面を、ITを活用して、即座に把握し、施策に活かせる。こうなって初めて人事業務もIT進化の恩恵を受けられるのではないでしょうか。
(2008年6月19日 当社アドバイザリーパートナー 山形 長之)
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